2023.11.24

牧草牛の健康機能で、アスリートフードの開発を

全国で有名な牛乳と乳製品の高級ブランド・宇野牧場が アスリートとのコラボを仕掛ける背景とは?

宇野 剛司 (うの たけし)
株式会社宇野牧場 代表取締役社長
1983年、天塩町生まれ。酪農学園大学卒業。2005 年、家業を担うために就農。酪農スタイルを、それまでの舎飼いから集約放牧に切り替える。2011年に6次産業化法に基づく認定を受け「トロケッテ・ウーノ」を発売。

事業について教えてください

宇野牧場は、酪農業と乳製品、加工業、飲食業などを行っています。酪農業は父の後を継いで3代目をやっていて、父の代までは一般的な牛乳の生産だけでしたが、後を継いでからは、乳製品の加工を2013年にスタートし法人化しまして、それから徐々に商品数を増やし、2019年に有機JASの認定を取り、2020年度からオーガニックの牛乳、ヨーグルトを生産開始しました。現在は、肉牛の生産、チーズの販売も行っています。

道北は牛にとって過ごしやすい土地であり、おいしい牛乳が取れるのだと思います。もともとはこんなに高額ではなかったのですが、今は日本で一番高いと紹介されていま す。札幌では、北区、西区と南区でソフトクリーム販売する店がありますが、2023年6月から札幌大通で直営店をスタートします。 酪農業界ですが、かつてないほど厳しい状態です。決まった販売価格と、輸入飼料や燃料費など経費高騰との板挟み。僕はそんな事態があっても困らないよう、できる限り(サプライチェーン全体を)自社でまかない、価値を高め、価格決定権を持ち、そしてこだわったお客様とつながっておく準備をしています。おかげで今、安定的な形ができていると思っています。

実は、元々オーガニックを意識して いたわけではありません。跡継ぎで就農した頃の僕は、父が病気になった時に、より安全安心なものを求めて、化学的なものや農薬を使わないよう自分の意識が変わったのです。放牧した牛乳には、ビタミンが多いとか、抗酸化力が高いとか、免疫力を高める機能が高いという話もあって、父の病気を少しでも和らげたいと思いました。いろいろな治療をしても、やはり一番は食生活の改善なので、自然のままの力を使って最大限に生産できる牧場作りを考えるようになっていました。まだまだ世の中には、どういった形で生産をされているか情報が少なくて、知識を持たずただ単に食べてしまう食べ物が多いわけです。作る側として私は、おいしいのは当たり前で、安心安全なので体を健やかに保つことができる、それこそが本来の食べ物である、ということを伝えていきたいと思います。

北海道イエロースターズとどんな出合いを?

三木さんとの出会いは、商品ブランディングやデザインをお願いしている方から紹介をいただきました。僕も小中高とバレーボールをやっていたので、面白いなと興味を持ちました。今でも、町内のスポーツ大会に呼ばれて出る事はあります。地元天塩町の子供たちも力を入れているので、バレーボール業界に僕も何か関わってきたいと思っていました。また事業として考えても、食べ物を生産していますので、食を通じた体の内面からの健康づくりや、アスリートの体づくりをサポートすることで、チームに貢献できると考えました。

今後やっていきたい事は?

牛乳や加工品のほかに、牛肉生産も始めています。スポーツ選手じゃなくても、体を鍛えている人が昨今増えましたよね。彼らは肉については基本、高タンパク低カロリーを求めるので、鶏肉を選びます。牛肉だと運動させず肥育して脂の甘みや口の中でとろけることがおいしい、とされています。でも健康的な牛肉もあります。牧草牛(グラスフェッド)です。食べ慣れた和牛に比べて赤身肉は硬めですが、噛みごたえがあり、肉の旨味が強い。そして、高タンパク低カロリーで、青魚などに含まれ、血液循環がよくなるというオメガ 3 脂肪酸が多く含まれています

こうした牛肉の試験生産も行っていて、これらをアスリートの皆さんに提供したいですね。またチーズ製造の副産物として生まれるホエイは、タンパク質が豊富です。これをプロテイン食品にできないか、といった商品開発などをイエロースターズさんや関係する方々と一緒に行えたら、と考えています。 何事も楽しくなければ続かないです。バレーボールにエンタメ要素を入れるという、三木社長の構想も面白い。 バレーボールをやりたい子供たちも増えると思います。そんな進化するバレーボールを、関係者として僕も近くで見ていたいと思います。


株式会社 宇野牧場

1945年に宇野牧場は、道北圏の専業酪農地域の一角を担う天塩町で創業 。2005年 、3代 目として就農した宇野剛司さんが株式会社として法人化する。大学時代の授業でニュージーランドの酪農と出会ったことから、放牧して牧草のみで牛を育てるグラスフェッドを日本でいち早く導入。乳量が当初減ったものの、3年目から牧草の質も良くなり、乳量も増えていった。放牧酪農により時間のゆとりも生まれ、牛乳の加工品製造や、牧場を眺めるカフェスペースをオープンするなど、多角的経営を実現し、酪農業の典型的なスタイルを変えた。2020年には、有機飼料、有機畜産物、有機加工食品 の3つの有機JAS認証を取得した牛乳を「宇野牧場史上最高峰の牛乳に辿り着きました。」の商品名で販売開始した。